人気ブログランキング | 話題のタグを見る

無言は多様

manun.exblog.jp
ブログトップ

H田君

H田君_c0009516_22284091.jpg
「金を集られて自殺」の記事を読んで、高校時代のH田君を想い出してました。

”弱い者達が夕暮れ さらに弱い者をたたくその音が響きわたれば ブルースは加速していく”(byブルーハーツ)

「弱い者をたたくと強い者から叩かれるのでやめましょう!(因果の法則)」が身にしみて分かると「やめた方がイイ」となるんですが。

高校時代、食堂でベビースターラーメンをボリボリ食べながら歩いていると、前からN島君が”中華そば”を持って歩いて来たので、わたしゃ、おもむろにベビースターラーメンを”ザザザッ”と丼に入れてあげました。
「何すんねんっ!」とN島君。
「サービスや。とっとけ!遠慮はいらん!」と私。
「これ、H田のラーメンやぞ。知らんぞ‥知らんぞっ!」とN島君。
あ、出前中だったのね‥。お疲れさま。
えっ!‥

ま、顔面蒼白でしたね。私。
たぶんカリブ海より青く透き通っていたと想像できます。

H田君というのは、それはもう野獣的に元気な方で、「とっ、止まれ〜!」と拳銃を構えた警官をバイクで追い回したり、対立する暴走族の車に飛び乗ってガラスを蹴り割ってケンカをしたりと、誠に狂気に満ちた方でした。
目が違うんですよ。普通の目ぢゃないんです。(ありゃぁ〜人間でねぇべ‥)
勿論、対話を好む様な方ではなく、とりあえず意味もなく殴るのが大好きで、誰かを殴っては金を巻き上げ、高校生活の糧とされていました。

後にH田君が「おぅ、ベビーラーメン入れてくれたんやなぁ。ありがとうなぁ!」と特別に目を付けてくれる様になったのは言うまでもありません(T_T)

ある時、H田君に貸したレコードがなかなか返ってこないので「なぁ、貸してるレコードいつ返してくれんねん?」と聞くと「何言うてんねん。あれは俺にくれたんやろ?アホ言うたらあかんで」と言うので、しつこく「返してくれ!」と言うと「ほぉ、エエ根性してるやんけ。ほな、今日、俺の家まで取りに来いや」との事。

あの‥、家、知らないんですが‥

とりあえず友達に場所を聞いて向かいました。山科の市営団地まで‥。
(ん〜ファンキー♪)
「やばいなぁ‥。やばそうな連れがたむろしててカモにされたらどーすんねん!命か?レコードか?」などとぼやきながら玄関まで到着。

チャイムなどなかったので、ドアをコンコンと叩くとH田君本人が出てきて「なんや、ほんまに来たんけ?まぁ、入れや!」との事。

中に入るとそこには‥

病弱そうなお父さんが寝ておられました。
コタツの周りには、過労気味なお母さんとまだ小さな妹達。
「お兄ちゃん、お友達?」と聞く妹に「うん。そうやで。」と応えるH田君は、学校で暴れまくる姿が信じられないほど、家族を優しくいたわっていました。

「何飲むねん?」と自らお湯を沸かし、コーヒーを入れてくれました。
「俺なっ、音楽好きやねん♪」と喋るH田君はホンマに普通の高校生でした。
余りにもざっくばらんなH田君の調子に拍子抜けした私も時間を忘れて喋り込んでいました。

「もう、遅いし、そろそろ帰るわ」と言うと「あ、お前、ピンクフロイド好きやったな。俺、これ聴かへんし、やるわ!」と渡してくれたのが冒頭を飾るレコードです。(見る度にH田君を想い出す)

次の日、学校で見るH田君はいつもの暴れん坊に戻っていましたが、その日以来、彼は仲良く接してくれるようになりました。

根っから本当に悪い奴なんていないんでしょうねぇ。
みんなそれぞれ言葉にできない心の叫びがあるんだと思います。
人の心なんて小手先でどうにもこうにもならない事は解っていますが、痛ましい事件を聞く度に「少しでも分かり合えたらなぁ‥」と思う今日この頃です。
(と、言いつつ、実は好き嫌いの激しい偽善者です。すまん。)
by manun | 2005-02-01 22:42 | たわごと