有り難い話だが、私の所属するノスタルジックスバンドには食通な吾人がおられる。
まぁ、その方々と「あそこの店知ってるけ?」とか「ここの何は美味い!」などの雑談を交わすのが楽しみだったりするのだが、随分前に「あつ盛り」という蕎麦を食べた事があるかと問われた。
「いや、食べた事ないですね」と答えると食通な二人は「決して美味いとは言い切れないが偶に食べたくなる味なので京都人なら一度は食べておいた方が良い」との事だった。
なんでも保温状態を施した蒸籠に蒸した蕎麦を盛りつけ、熱い熱い濃い蕎麦つゆで食べると言う。
出汁を注ぐ器には刻みネギが山ほど盛りつけてあり、底には生卵がしかれていると言う。
故にネギ嫌い、生卵嫌いの吾人にはお奨めできないとの事。
が、刻みネギと生卵が異常に大好きな私には涎ズルズルな堪らなくそそる話である(笑)
京都に住みながら、自称蕎麦好きなどと言いながら、そんな蕎麦が御所の近くにあるなんて全く知らなかった。(無知の知)
いや、熱い蒸し蕎麦を熱い出汁で食べるなんて生まれてこの方、聞いたことも無かったので軽いカルチャークラブ、いや、カルチャーショックを喰らった感じだ。
(元来、蕎麦は蒸して食すものだったらしい‥ざる(蒸籠)に盛りつけるのはその名残らしい‥勉強になった‥)
屋号は「竹邑庵太郎敦盛 (ちくゆうあんたろうあつもり)」というらしい。
第二日赤に入院中の友人の見舞いに訪れる機会があったので帰りに立ち寄ってみた。
車が入れない様な細い路地に入ると「フツーの家を無理矢理店舗に?」と思える様な面構えの、それらしき店舗があった。
入店すると「友達の家に来たのかしら?」という様な間取りだ。と、いうかやっぱり客商売を前提としていないフツーの室内だ(笑)
メニューも「熱い蕎麦」と「冷たい蕎麦(普通のざるそばに非ず)」の二種類だったと思う。
とりあえずスタンダードな「あつもりそば」をオーダー。
一斤が880円に対して一斤半が900円だったので迷わず一斤半を注文(貧乏性故カロリーオーバー‥)
蕎麦が来るまでにアルミ製の急須と湯飲みが置かれた。
ズズッと啜りつつ「ん?変わったお茶‥?」と思ったら蕎麦湯だった(笑)
って事は蕎麦は蒸しているのではなく、茹でているのだ(爆)
ま、そんな細かい事はどーでもエーし、と思っていると蕎麦が来た。
これである。
保温状態にする為、蕎麦の盛りつけてある蒸籠の下には熱湯の入った皿が敷かれているらしい(確認してへんけど‥)
右手前は蕎麦湯の入った湯飲みだ。
その上にあるのがネギ山盛り(意外に少ない?)の下に生卵を敷いたお椀。
その上にあるのが素手でつかめないくら熱々の出汁入り徳利。
その左がお口直しの梅らしい。
とりあえず、赤いお椀に出汁を注ぎ、ぐちゃぐちゃに混ぜてみる。
そこに蒸籠の蕎麦を入れようと持ち上げてみると結構蕎麦同士が絡まって適量を取り分けるのが難しい(爆)
ま、なんとか椀に蕎麦を投入し、一口すする。
おぉ、なんとフニャフニャな蕎麦のコシ加減(笑)
そら、冷水で絞めた一般的なざる蕎麦とは異なって当たり前だ。だってその加減がココの売りなんだし。
そして出汁の濃厚さが強烈である。
いや、もしもこの出汁を冷たい状態で食べればそんな風に思わないだろう。
コーヒーでも「ホット」と「アイス」では豆からの抽出の仕方が異なる。熱い状態は風味や香りを強く感じるのだ。
冷たくて濃厚で美味しいアイスコーヒーをホットで飲むと「えぇっ!」という違和感を感じるのは当たり前だ。
そこに大量の刻みネギと生卵&ワサビ。完全に蕎麦の風味を消しにかかっていると思えるかもしれないが、このアンバランス加減に深い意味があると思ってしまった。
実際食べながら「うーん、これって美味いのかなぁ?普通の冷たいざる蕎麦の方が美味しいのんちゃうかなぁ‥?」などと考えつつ、途中で梅干しを出汁に投入すると「おっ!さっぱりして美味いやん!」などと思いつつ完食。
店を後にし、ガレージに向かいつつ「なんだか今日は不思議な食べ物を食べたなぁ‥」と思いつつも「また機会があれば食べてみたい‥」と思ってしまった。
そう、「あれはこうあるべきで‥」なんて理屈なんてどうでもいい、もういっぺん食べてみようと思わせる味作りをしている店の勝ちである(笑)